なぜ、展覧会なのか

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自己紹介で「国内外のデザイン展を取材するうち、展覧会というメディアの可能性に興味をもち、」と書きました。

フリーになってから5、6年。2010年くらいの頃です。当時、私は取材執筆を生業にしていましたが、やりたいことは「書く」というよりは「伝える」ことでした。雑誌であろうと、ブログであろうと、自分が見聞きしたものごとを、世の中にわかりやすく伝えることが役割だと思っていました。

2016年のはじめに、フィンランドのプレスツアーでたまたまルート・ブリュックに出会ったときも、私はライターとしてこれを書けばよかった。実際、その使命を受けて渡航したわけですから。けれど、ブリュックの作品を目の当たりにしたとき、とっさに「文字ではダメだ」と思ってしまいました。

美術館の展覧会準備室で、床やテーブルの上に置かれ、点検を待つ陶板や立体作品が放つ、凄み。その衝撃は、文字や文章で伝えられるようなものでは、到底なかったのです。

もしも、私に精細な映像をつくる術があったら、そうしたかもしれません。作品の空気感まで捉えるような写真の技術があったなら。でも私は、そのどれも持ち合わせていませんでした。

じゃあ、どうするのか。答えはシンプルでした。「持っていくしかない」。ブリュックのセラミック作品を日本に持っていき、実物を、本物を、皆さんに見てもらうしかない。そして、そのすばらしさを、生で、感じてもらいたい。

「展覧会というのは伝えるためのメディアである」という思いがなんとなくずっとあって、興味をもって関わっていたわけですが、その思いを、ついに実行に移すときが来たのです。

Rut Bryk: The Touch of Butterfly
Tokyo Station Gallery 2019