私は、展覧会を物語化するために大切なことは、制作者としていかに作家・作品に近づけるかだと思っています。つまり、リサーチと取材です。
現存作家であれば、直接会って話を聞くことができるので、本人のこと、作品のことについて、とことん取材をします。できるだけ暮らしや制作環境に触れ、どのように作品が生まれるのかを目の当たりにします。その上で、今の時代にその作家を紹介する意義について考え、どんな展覧会にしようかと相談しながら、一緒につくっていきます。
故人の作家であれば、その人物を知る家族や関係者に話を聞きます。当時の時代性や社会背景、その作家がどのような人生を歩んだのか、どのような状況で作品が生まれたのか。事実に基づき、想像力を働かせて、できるだけ解像度高くその存在をイメージし、制作のメンバーと共有していきます。
そのとき、もうひとつ大切なのは、自分がまず作家のファンになっていくことです。もちろん企画の経済性や社会性も考えなければいけませんが、まず制作者自身がその作家を好きになること。「私(たち)は誰にも負けないファンなんだ」と自負して初めて、その展覧会で伝えるべき物語がどのようなものかが見えてくるような気がします。
展覧会は、多くの人たちが関わってつくられていきます。その基盤を支えているのは、プロジェクトに関わるひとりひとりの想いとリスペクトです。それぞれの「好き」と「おすすめ」が積み重なっていった先に、会場でそれを受け取ってくださるお客様(ファンの皆さん)との交歓があります。
良い展覧会というのは、つくるひとも、見るひとも、みんなの「好き」が集まってできていくもの。私は、そう信じています。